初めてのお稽古、どうすればいい?|錦凰流のお稽古日の過ごし方
みなさん、こんにちは。吟剣詩舞(ぎんけんしぶ)という日本の伝統芸能を継承している「錦凰流(きんおうりゅう)」四世宗家の荒井龍凰です。
明治生まれの初代宗家から115年続く流派に生まれ、私は3歳で初舞台を踏みました。現在は東京都港区を拠点に、未経験の方でも楽しく学べる伝統芸能教室を主宰しています。
初めて伝統芸能のお稽古に行くとき、
「会場に着いたらどうすればいいの?」
「お稽古中の部屋に入っても大丈夫?」
「先生や先輩にはどう挨拶すればいい?」
など、舞そのものとは別のところで不安になる方もいらっしゃると思います。
特に公民館や区民センターなどの施設を利用したお稽古では、一般的な習い事とは少し違った雰囲気を感じるかもしれません。
でも、ご安心ください。
特別に難しい作法があるわけではありません。
今回は、錦凰流のお稽古日に「施設に到着してから、お稽古を終えて帰るまで」の流れを、写真と一緒に分かりやすくご紹介します。
初めての方は、この記事を読んでからお越しいただければ、当日の動きもイメージしやすくなると思います。
まずは会場に到着したら
お稽古の日は、事前にお伝えした時間に合わせて、直接お稽古を行っている施設までお越しください。
錦凰流のお稽古では、港区内などの公的施設・公民館を利用しています。
初めて来る場所だと、「受付はどこですか?」「先生を探さないといけないのかな?」と思われるかもしれません。
ですが、基本的にはご案内したお稽古会場まで直接お越しいただければ大丈夫です。
会場に着いたら、まずはお稽古をしている部屋を探しましょう。
そして、ここから少しだけ「お稽古ならでは」の所作が始まります。

玄関では、まず靴をそろえる
お稽古場に入る前に、まずは脱いだ靴をそろえましょう。
「そんなこと?」と思われるかもしれませんが、こうした小さな所作も、お稽古の一部だと考えています。
靴を脱いだら、次に履く人の邪魔にならないよう、つま先を外側に向けてきれいにそろえます。
日本の伝統芸能では、舞そのものだけではなく、こうした日常の所作も大切にします。
靴をそろえる。
物を丁寧に扱う。
人に挨拶をする。
一つひとつは簡単なことですが、こうした積み重ねが美しい立ち振る舞いにつながっていきます。
初めての方も、難しく考えず「靴をそろえて入る」と覚えておけば大丈夫です。

お稽古中の部屋に入るとき
会場に到着したとき、すでに中でお稽古が始まっていることがあります。
部屋の中から、詩吟の声や音楽、足音などが聞こえてくるかもしれません。
「もう始まっているけど、入っていいのかな?」
と迷う必要はありません。
ご自身のお稽古時間であれば、そのままお入りください。
ただし、お稽古中の場合は、静かにふすまを開けるようにしましょう。
勢いよく開けたり、大きな声で「こんにちは!」と言ったりするのではなく、周囲のお稽古を妨げないよう、そっと入ります。
これは「厳しいマナー」というよりも、今集中している人へのちょっとした配慮です。

入室したら、まずは静かにお辞儀
部屋に入ったら、先生やその場にいる皆さんに向かって、軽くお辞儀をします。
大きな声で挨拶をする必要はありません。
お稽古中であれば、静かにお辞儀をするだけでも十分です。
伝統芸能のお稽古では、「お願いします」という気持ちを込めてお辞儀をするところから、お稽古が始まります。
初めての方は、
「こんにちは」
と一言添えて、軽くお辞儀をしていただければ大丈夫です。
先輩の生徒さんがいる場合も、同じように軽くご挨拶ください。
最初は少し緊張するかもしれませんが、何度か通えば自然にできるようになります。

お稽古が始まる前に、
入室したら、お稽古の準備をします。
動きやすい服装で来ていただいて構いません。
足袋など必要なものがある場合は、このタイミングで身につけます。
お扇子を使う方は扇子を準備し、剣舞をする方は使用する刀を準備します。
道具を出したら、すぐに舞を始めるわけではありません。
まずは自分の身体と道具を、お稽古ができる状態に整えます。
初めての方の場合は、分からないことがあって当然です。
「これはどこに置けばいいですか?」
「何を準備すればいいですか?」
など、分からないことがあれば遠慮なく聞いてください。

いよいよお稽古開始!
準備ができたら、いよいよお稽古が始まります。
剣詩舞のお稽古では、いきなり難しい振付を踊るわけではありません。
立ち方や足の運び、身体の向き、目線など、舞の基本となるところから一つずつ確認していきます。
剣舞であれば刀の扱い方、詩舞であれば扇子の扱い方など、それぞれの道具を使った基本も身につけていきます。
以前の記事でもご紹介したように、錦凰流では未経験の方にも一つひとつ丁寧に指導しています。
最初は「右足と左足、どっちだっけ?」となってしまっても全く問題ありません。
繰り返しているうちに、少しずつ身体が覚えていきます。
そして、30分のお稽古が終わる頃には、来たときとは少し違う身体の使い方ができるようになっているはずです。
お稽古の流れはこちらを参照

お稽古が終わってからは
お稽古が終わったら、道具を片付けます。
稽古着を使用した場合は、脱いだまま置いておくのではなく、きれいにたたみます。
舞を学ぶというと、振付や技術のことばかりを考えてしまいますが、私が大切にしているのは「物を大切にする」ということです。
衣装や扇子、刀など、これから自分が使う道具を丁寧に扱う。
使ったものを元の状態に戻す。
こうした習慣も、伝統芸能を学ぶ上で大切なことだと思っています。

最後はお辞儀
すべての片付けが終わったら、最後に先生へお辞儀をして、お稽古終了です。
「ありがとうございました」
という気持ちを込めて、静かにお辞儀をします。
入ってきたときの「お願いします」というお辞儀から始まり、最後は「ありがとうございました」というお辞儀で終わる。
とてもシンプルですが、この始まりと終わりを大切にするのも、伝統芸能のお稽古の美しさの一つです。
お辞儀をしたら、忘れ物がないか確認して、気をつけてお帰りください。

おわりに
ここまで読むと、「意外といろいろ決まりがあるんだな」と思われた方もいるかもしれません。
でも、実際には一度経験してしまえば、どれも難しいことではありません。
靴をそろえる。
静かにふすまを開ける。
入室したらお辞儀をする。
準備をする。
お稽古をする。
道具や稽古着を片付ける。
最後にお辞儀をして帰る。
これだけ覚えておけば大丈夫です。
そして、こうした一つひとつの所作を丁寧に行うこと自体が、剣詩舞を学ぶ楽しさの一つでもあります。
普段の生活では、靴を脱いだら急いで部屋に入り、物を置いたらすぐ次のことをする。
そんなことも多いのではないでしょうか。
お稽古の時間だけは、少しゆっくりと身体を動かし、自分の所作に意識を向けてみる。
それだけでも、日常とは少し違った時間を過ごすことができます。
「伝統芸能のお稽古って、なんだか敷居が高そう」
そう思っている方も、どうぞ心配しないでください。
分からないことは、その場で一つずつお伝えします。
最初は周りの人を真似しながらでも大丈夫です。
まずは一度、実際のお稽古場の雰囲気を見に来てみてください。
皆さまとお会いできるのを、心より楽しみにしています。


