-お扇子について-│錦凰流港区教室

2026.08.03
2026.07.27

みなさん、こんにちは。吟剣詩舞(ぎんけんしぶ)の伝統を継承する「錦凰流(きんおうりゅう)」四世宗家の荒井龍凰(あらい りゅうおう)です。

私は明治生まれの初代宗家生誕から115年続く流派に生まれ、3歳で初舞台を踏みました。現在は東京都港区を拠点に、年齢や経験を問わず、どなたでも楽しく学べる伝統芸能教室を主宰しています。

伝統芸能に興味を持ち、「やってみたいけれど、右も左もわからない…」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。道具ひとつをとっても、どんなものを選べばいいのか迷ってしまいますよね。

そこで今回は、吟剣詩舞の舞に欠かせない重要アイテム「お扇子(舞踊扇子)」の柄や選び方について詳しく解説します。これからお稽古を始めたい方、扇子の知識を深めたい方はぜひ参考にしてみてください!

◆ はじめに

剣詩舞で使うお扇子

剣詩舞の舞台では、「9寸5分(約28.8cm)」の舞踊扇子を使用します。これは日本舞踊で使われているものと同じ規格のサイズです。普段私たちが日常のあおぎ用に使っているお扇子よりも一回り大きく、舞台上で遠くのお客様からも舞の軌道が美しく見えるように作られています。

お扇子の柄は自由になんでもよいわけではなく、演題(舞う詩や曲のテーマ)に合わせた柄を選ぶのが基本ルールです。

また、漢詩や和歌の情景を扇などで表現する「詩舞(しぶ)」では、両手に1本ずつ扇子を持つ「2枚扇子」での振付もあります。錦凰流では、舞台の本番では原則として左右で全く同じ柄の扇子を揃えて使用します。ただし、日々のお稽古の段階であれば、左右で柄が違っていても全く問題ありませんのでご安心ください。

各部名称と骨の種類

お扇子は一見シンプルに見えますが、それぞれの部位に名前があり、細部までこだわりが詰まっています。基本の構造を知っておくと、道具への愛着もより湧いてきます。

【お扇子の基本構造】

  • 地紙(じがみ): 絵柄や金銀が施されている和紙の部分。

  • 骨(ほね): 地紙の内側にある細い竹の骨組み。

  • 親骨(おやぼね): 一番外側にある、両端の太く頑丈な骨。

  • 要(かなめ): 骨が集まる一番下の部分を金具で固定している場所。「要(かなめ)」という言葉の語源でもあります。

【骨の仕上げ・色の種類】

扇子の印象を大きく左右するのが「骨」の塗りの種類です。

  • 黒塗り(くろぬり): 親骨や中骨を黒い漆などで塗ったもの。格調高く、最も一般的です。

  • 竹(地塗り・素竹): 漆などを塗らず、竹本来の質感や色味をそのまま活かしたナチュラルな仕上がり。

  • 赤骨(あかぼね)・白塗り・赤茶系: 演目や衣装の華やかさに合わせて使い分けるカラーの骨。

  • ケシ塗り: 光沢(ツヤ)を抑えたマットな質感の塗り。落ち着いた雰囲気を演出できます。

◆ お稽古用のお扇子

「せっかくなら最初から美しい本番用を使いたい!」と思うかもしれませんが、普段のお稽古用と舞台の本番用は分けるのが鉄則です。

お稽古では、開閉(要返しなど)を何百回、何千回と繰り返します。そのため、本番用の高級なお扇子を使い続けると、要が緩んでしまったり、地紙が擦り切れて傷んでしまうのです。

そのため、普段のお稽古では地紙の柄がシンプルで扱いやすい「お稽古用扇子」を使用します。価格帯は5,000円程度が目安です。まずは手頃なお稽古用を1本用意し、しっかり手に馴染ませていきましょう。

◆ 本番用のお扇子

舞台の本番では、舞う演目の情景や感情、登場人物の想いを表現するために、演題にぴったり合った柄のお扇子を選びます。代表的な例をご紹介します。

【詩舞の場合】

詩舞では、歌われる詩の「季節感」や「世界観」に合わせた色柄を選びます。

  • 赤系統(梅など): 『弘道館に梅花を賞す』『寒梅』『雪梅』など、梅の花を題材にした詩では、可憐さや凛とした強さを象徴する赤やピンク系統を選びます。

  • 青系統(情景・月・水): 『静夜思』『富士山』『水戸八景』など、夜の静けさや雄大な自然、静かな情景を描く詩では、涼やかで深みのある青系統が映えます。

  • 金系統(慶事・おめでたい演目): 『松竹梅』『祝賀の詞』『宝船』など、お祝いの席で舞う演目には、華やかで格調高い金色の地紙が使われます。

【剣舞の場合】

刀を持って舞う「剣舞(けんぶ)」では、武士の心意気や歴史的背景を意識した扇子が選ばれます。

  • 黒系統: 何かに見立てて舞う場合を除き、基本的には男らしさや勇ましさ、武士の威厳を表現する「黒系統」の重厚な扇子がよく使われます。

  • 銀系統: 『九月十三夜陣中の作』のように、夜空に浮かぶ澄んだ「月」を象徴的に表す場面などでは、シックな銀系統が用いられます。

  • 白・赤の使い分け: 源平合戦をテーマにした演目などでは、歴史的な史実に合わせて「源氏軍=白」「平家軍=赤」のように、演じる陣営によってお扇子の色を変える趣のある工夫も行われます。

◆ お扇子の購入方法

錦凰流でお稽古を始める際、お扇子を用意する方法はいくつかあります。

  • 流派の経由で購入(推奨): 錦凰流では、長年お世話になっている信頼できる和道具屋さん(小道具屋)と取引があります。指導者である私や先生とご相談のうえで購入していただけます。流派価格(割引)でお得に購入できる場合も多いです。

  • ご自身で気に入ったものを購入・持参: もしご自身で「これが気に入った!」「昔使っていたお扇子がある」というものがあれば、事前に先生にご相談ください。演目やサイズに合っていれば、ご自身で準備されたものを使っていただくのも大歓迎です。

◆ おわりに

お扇子は、単なる「道具」ではなく、舞手の感情や情景を観客に伝える「心の延長」となる大切なパートナーです。最初は1本の練習用扇子からスタートし、上達するにつれて演題に合わせた華やかな扇子を揃えていくのも、吟剣詩舞を習う大きな楽しみのひとつですよ。

「敷居が高そう」「道具を揃えるのが大変そう」と感じている方も、錦凰流港区教室では一人ひとりのペースに合わせて優しく丁寧にサポートいたします。

まずは見学や体験稽古から、どうぞお気軽にお越しください。みなさんと一緒に素敵な日本伝統芸能の世界を楽しめることを、心より楽しみにしています!

お問い合わせはこちら