
剣詩舞を学ぶ中で、私にとって舞台はただの発表の場ではありません。流派ではと詩心表現といい、舞台上では戦国時代の戦場や平安時代のお花見の場面などを想像しながら、詩に応じた役回りを演じていきます。
これまでの人生で数え切れないほど舞台に立ってきましたが、どの舞台も一つひとつが忘れがたい思い出です。
✨ 初めての大舞台
3歳で前進座に立った初舞台のことは、今でも舞台袖の薄暗さや、楽屋で衣装を着けたことなど、うっすらと覚えています。
舞台上の記憶はほとんどありませんが、それに向けてのお稽古の記憶は強く残っています。
当時は四世代で舞台に立ち、祖母や母の後ろで必死に型を覚えながら舞ったあの瞬間。
小さな体で舞った経験が、「舞台で表現する楽しさ」の原点となりました。
✨ 印象に残る公演
少年時代、財団法人日本吟剣詩舞振興会主催のコンクールに出場したことで、大きく成長しました。
全国大会に進むにつれ、やる気もどんどん高まり、ライバルと切磋琢磨した経験は大変でしたが、今振り返ると技芸を向上させる貴重な財産となっています。
こうした経験を重ねることで、舞うことへの自信と集中力が養われました。
海外公演もまた、印象深い思い出です。
初めての海外公演は18歳のとき、二世宗家に随行した中国大連公演。観客の熱気、日本とは異なる反応、舞台下から握手を求める人々――その驚きは今でも鮮明です。
シドニーオペラハウスや在オーストラリア大使館主催の公演では、文化や言語が異なる観客に向けて舞を披露しました。
詩吟を英語で伝えることはできませんが、刀や扇子、舞の所作を通して、感情や物語の力が観客に伝わることを実感しました。
✨ 舞台での学び
舞台での経験は、単に技術を磨くだけでなく、心を整え、集中力を高める訓練でもあります。
また、観客の反応を受け取ることで、舞う者としてだけでなく、人としての感受性も豊かになっていきます。
こうした学びは、教えるときにも門下生に伝えています。
「舞台に立つことの意味」「舞を通して何を感じるか」を理解することが、剣詩舞を深く楽しむ第一歩です。
剣詩舞は、舞台に立つたびに新しい発見があります。
初めて舞台に立つ子どもも、長く学ぶ大人も、それぞれの目線で舞台の喜びを感じることができます。
舞台での一瞬一瞬を大切にしながら、これからも門下生と共に剣詩舞の世界を広げていきたいと思っています。