
皆さんは「剣詩舞(けんしぶ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「日本刀やお扇子を手に、詩吟に合わせて舞う」それが剣詩舞です。
一見すると武道のようでもあり、舞踊のようでもあり、そして朗読劇のようでもある。複数の要素が合わさった、日本ならではの伝統芸能です。
剣詩舞の大きな特徴は「詩」と「舞」が一体となっていることです。
もともとは漢詩や和歌の朗詠(これを「吟」と呼びます)に合わせて刀を振り、心の情景を舞いによって表現してきました。
例えば、戦に向かう武将の勇ましい姿や、四季の移ろいを詠んだ和歌の情緒。言葉だけでは伝わりきらない想いや情景を、舞によって視覚的に伝えるのです。
舞の動きには、力強さと繊細さが同居しています。刀を大きく振り下ろす一瞬には武士の気迫があり、扇子を開いて舞う所作には雅な美しさが宿ります。
この「剛」と「柔」の調和が、剣詩舞を他の芸能にはない独特の世界にしています。
さらに剣詩舞は、見るだけでなく「演じる人」にとっても魅力の大きい芸能です。
刀を構える姿勢は自然と背筋を伸ばし、呼吸を合わせて舞うことで心身が整います。
また、詩の意味を理解しようとすることで、古典や歴史への関心も深まります。
単なる動きの稽古ではなく、「体・心・知」を総合的に磨くことができるのが剣詩舞なのです。
私たちの流派でも、子どもから大人まで幅広い世代が剣詩舞を学んでいます。
「運動不足を解消したい」「日本文化に触れてみたい」「舞台に立って表現してみたい」――
始めるきっかけは人それぞれですが、稽古を続けるうちに、舞を通して自分自身を表現する楽しさを感じる人が多いようです。
もし「ちょっと難しそう」と思われる方がいたら、ご安心ください。
最初は刀や扇子の持ち方、歩き方から丁寧に学びます。舞台に立つまでのプロセスも一歩ずつ積み重ねていくので、初心者の方でも安心して取り組めます。
剣詩舞は、日本人の心と美意識が詰まった芸能です。
そして舞う人の数だけ、そこに込められる物語があります。
ぜひ一度、この世界を体験してみてください。